- 2021年10月21日
脂質とは?ざっくり調べたい人向け解説
脂質と聞くと、タンパク質、炭水化物と並んで3大栄養素ということは、知っているけれど、脂質=油(脂)=太る原因、というザックリとしたイメージしかない方も多いのではないでしょうか?
脂質と言っても、脂肪酸、善玉(悪玉)コレステロール、オレイン酸、オメガ脂肪酸、えごま油、オリーブ油、動物性脂肪などなど。
何やら油の仲間のようなものの名前は聞いたことがあるけど、何かと聞かれれば答えることは難しくないですか?
本記事では、分子構造といったアカデミックで小難しい内容は避けて、出来る限り噛み砕いて解説していきます。
脂質と脂肪酸との違い
脂質の主成分が脂肪酸です。脂肪酸にグリセリン(別名グリセロール)が結合したものが脂質です。
一口に脂肪酸と言っても、何種類かあり、それぞれ性質が異なります。
常温で固形のもの(バターや牛脂など)は「飽和脂肪酸」とよばれ、
常温で液体のもの(オリーブオイルなど)は「不飽和脂肪酸」となります。
飽和脂肪酸
一般的な「油・脂」の悪いイメージは、飽和脂肪酸の特徴だと思われます。
同量の炭水化物とタンパク質のと比較しても約2倍のエネルギーを持っています。
少量でも大きなエネルギーを確保できるので、非常に効率の良いエネルギー源であると同時に、余りやすいエネルギー源とも言えます。
余った分は、中性脂肪として溜まっていきます。
飽和脂肪酸は、多量に摂取すると、LDL(悪玉)コレステロールを増加させるので注意が必要です。
さらには、記憶力にも影響を与えるとされ、飽和脂肪を多く摂取した人は、記憶力と思考力が大幅に低下したとされます。
ハーバード大学の研究では、飽和脂肪の消費によっておこる炎症が脳の動脈に損傷を与えて、認知機能に障害が起こる可能性があると推察しています。
不飽和脂肪酸
飽和脂肪酸と対を成す存在の「不飽和脂肪酸」は、飽和脂肪酸と異なり、人体に必須となる必須脂肪酸が含まれています。
常温で液状であることも特徴のひとつです。
不飽和脂肪酸は、まず「一価不飽和脂肪酸(ω-9脂肪酸)」と「多価不飽和脂肪酸」に分かれます。
さらに多価不飽和脂肪酸は「ω-6脂肪酸」と「ω-3脂肪酸」に分かれます。必須脂肪酸になるのは「多価不飽和脂肪酸」の方です。ω-9脂肪酸は「n-9系」とも呼ばれ、ω6、ω3もそれぞれ「n-6系」「n-3系」とも呼ばれています。
ω-3脂肪酸(n-3系)必須脂肪酸
DHAやEPAといった、サプリメントにもなっている知名度の高い成分がオメガ3系の脂肪です。青魚に多く含まれていることで有名ですね。
ω-6脂肪酸(n-6系)必須脂肪酸
紅花油やコーン油、大豆油といった植物系の油に多く含まれており、普通に食事をしていると、多く摂取しすぎてしまう懸念がある脂肪酸です。
オメガ6の一つであるリノール酸は血中のコレステロールや中性脂肪を降下させる働きがありますが、多量に摂取すると、善玉コレステロールも減少させてしまいます。
ω-9脂肪酸(n-9系)
不飽和脂肪酸の中の一価不飽和脂肪酸と呼ばれるもので、こちらは必須脂肪酸ではありません。代表的なものはオレイン酸といい、体内でも合成することができる脂肪酸です。
悪玉コレステロールや血中中性脂肪を減少させる効果があるとされています。
図
脂質 | |||
飽和脂肪酸 | 不飽和脂肪酸 | ||
ー | 一価不飽和脂肪酸 | 多価不飽和脂肪酸(必須脂肪酸) | |
ー | n-9系(オメガ9) | n-6系(オメガ6) | n-3系(オメガ3) |
種類 | |||
ステアリン酸 | オレイン酸 | アラキドン酸 | DHA(ドコサヘキサエン酸) |
ラウリン酸 | エルカ酸 | リノール酸 | EPA(エイコサペンタエン酸) |
パルミチン酸 等 | ミード酸 等 | γ-リノレン酸 等 | α-リノレン酸 等 |
多く含まれている食品食材 | |||
肉類、牛乳、チョコレート、卵黄等 | オリーブ油、アーモンド、牛肉等 | コーン油、卵、ごま油、肉類等 | えごま油、亜麻仁油、青魚 等 |
トランス脂肪酸とは?
トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸の一種で、油脂の生成加工の過程で発生するものと、動物系、植物系の両方の天然の脂肪の中に少量存在しているものとがあります。
バターや乳製品にも含まれていますが、マーガリンなどに多めに含まれています。
しかし、後述する健康への懸念から、メーカー各社がトランス脂肪酸の少ない製品を開発・販売しているため、通常の食生活では、健康被害は少ないとされています。勿論偏った食生活はこの限りではありませんが。
WHOはトランス脂肪酸の摂取量を、総エネルギー(全カロリー)の1%未満にするように勧告しています。
トランス脂肪酸は、悪玉コレステロールを増加させ、善玉コレステロールを減少させるという効果があり、摂取するリスクとしては、心筋梗塞などの冠動脈疾患が増加する可能性が挙げられております。
ひとつ明るいニュースとしては、日本人は欧米人と比べ、元々トランス脂肪酸の摂取量が少なく、国民1人当たりの1日の平均摂取量は、総エネルギーの0.44~0.47%程度であり、WHOが定める1%以下に収まっています。
毎日のようにトーストにマーガリンをたっぷり塗る方や、脂っこいものがお好きな方は、注意してください。
コレステロールとは?
コレステロールと聞くと、なんとなく「太る」「不健康」というワードが関連で浮かんできます。
しかし実際は、身体になくてはならないものであり、むしろ体内で合成されている脂質の一種です。
コレステロールは、生き物の基本単位である細胞の重要な構成物質のひとつであり、さらには男性・女性ホルモンの材料になったり、胆汁の材料にもなっています。
体内には、常に一定量の
コレステロールが存在しています。コレステロールの出どころは、ひとつは体内で合成されたもの、もうひとつは食事からの摂取です。
食事から摂取したコレステロールが多ければ、合成量が減り、また食事からの摂取が減ると、合成量が増え、大体一定量になるように自動調整されています。
善玉コレステロールと悪玉コレステロール
コレステロールには「善玉コレステロール」と「悪玉コレステロール」があります。
名前からして悪玉コレステロールは、体内でなにか悪さをしていそうなイメージですが、実際のところはどうなのでしょうか?
コレステロールの基本的な流れは、肝臓から血液に乗って各臓器や細胞に運ばれていき、また細胞や臓器から肝臓へと帰っていきます。
善玉コレステロールは別名HDLコレステロール(High Density Lipoprotein)と呼ばれ、役割は細胞や臓器からコレステロールを回収し肝臓へ戻します。
悪玉コレステロールは、別名LDLコレステロール(Low Density Lipoprotein)と呼ばれ、役割は肝臓から書く臓器や細胞に送ります。
肝臓を出発地点とすると、行きが悪玉コレステロールで、帰りが善玉コレステロールです。
悪玉コレステロールと呼ばれる所以ですが、血中に多く存在しすぎると、血管の壁に溜まっていき、動脈硬化や心筋梗塞といった病気を引き起こす原因となっているからです。
逆に善玉の方は、悪玉とは対照的に、血管の壁などに溜まったコレステロールを除去したりして、動脈硬化の予防などに役立っています。
著者紹介
月宮エナ
書店員、飲食店経営を経てブロガーに転身 生活に役立つ知識や方法、雑学といったものを人に説明することが好きなブロガー